会社の社員食堂で昼食をとっている時に僕は気分が悪くなりました。
今までに経験した事がないくらいでした。
腎不全の末期になると尿毒症の症状が出てくると聞いていました。
心臓発作が起こったり、呼吸困難等になると教えてもらっていました。
僕は食堂の椅子に座ったまま動けなくなりました。それどころかそのまま倒れてしまいそうになりました。自分の体を支えるのに必死でした。会社で倒れると迷惑がかかると思っていたからです。
でも次にものすごいことが起こりました。心臓がドクンと大きな音をたててそれから息を吸っても吸っても空気が入ってこなくなりました。
一緒に食事をしていたK部長にも僕の異変が分かったらしく僕の食器を片付けてくれました。
総務室の他の方々は皆、会議だったのでHさんに病院に送る様に指示してくれました。
僕は自分で車で運転して病院まではとても行けませんでした。
Hさんに病院まで送ってもらい僕はそのまま入院する事になりました。
病院ではH先生の診察を受けました。
クレアチニンは8.0でした。
クレアチン8.0になると人工透析をお医者様からすすめられます。
人工透析をしないと生命が危険だからです。
でも僕は人工透析をせずに腎臓病が完治すると信じてここまで来ましたので、
人工透析は到底受入れることが出来ませんでした。
H先生は僕の気持ちを察してくれていて無理に人工透析を導入する事はありませんでした。
ですがシャントをつくろうとおっしゃいました。
シャントとは人工透析を行う際、充分な血液量が確保できるように、動脈と静脈を左手に直接つなぎ合わせた血管の事をいいます。 これをつくっておかないと人工透析は出来ません。
僕はシャントをつくるのは腎臓病に負けた気がした。
今までの長い間の食事療法や腎臓病完治の祈りや読書で勇気をもらったことやTさん、S先輩に激励してもらった事が全て無駄になるようで嫌だった。クレアチニンが上がって体に危険な数値になったからといって人工透析の準備のシャントを作るのは腎臓病に全面降伏するのと同じと考えていました。
H先生は僕の気持ちを分かって下さっていて、
「シャントをつくれば呼吸が楽になるから」
とおっしゃいました。
決して人工透析の準備をするとはおっしゃいませんでした。
僕の体が危険になれば僕は自分から人工透析を申し出ると、H先生は信頼してくれていたと思います。
僕はH先生の言う通りにシャントを作る手術を受け、10日ほど入院しました。