僕が仕事を休む決心をした頃はちょうど3学期の終わりに差し掛かっていました。
生徒達の間では、僕がどこか他の学校に行くと噂になっていた様です。僕が通院で学校を休む日があったから勘違いをしていたのでしょうか。
ある時、僕の家に電話がかかってきました。
生徒「先生、他の学校に行くの?」
僕「他の学校には行かないよ」
生徒「本当、やったー」
と受話器の向こうで何人かの生徒たちの声がしました。
ガチャッと10円玉の落ちる音がして、電話が切れました。
生徒達が勇気を出して公衆電話から僕に電話をしてくれたと思うと、涙が出ました。
僕は他の学校には行きませんが、この学校からいなくなるとは生徒達には言うことはできませんでした。
僕は病気に負けた様で悔しさがありました。
ですが病気を治して楽になりたいという思いもあり、言葉にはできない複雑な心境でした。
ど根性で体にかなりの負担をかけていましたが、校長先生のお話のおかげで考え方をかえる事ができました。
僕はしばらく休んで、H先生の病院に治療のために入院することになりました。
3月末の桜のつぼみが三部咲きの頃、僕はこの学校を後にしました。
この時は半年程で学校に戻ってくるつもりでしたが、この学校にもう戻ってくる事はありませんでした。
この時はまさかそんな事になるとは想像もつきませんでした。